世界を変えた10冊の本

あなたには人生を変えた本がありますか?

私にとって人生を変えた本は、幼児教育の重要性が腹おちした「学力の経済学」という本と出会えたからです。

さて、今回は1人の人生どころか、「世界を変えた10冊の本」の紹介です。

そして、「世界を変えた」と認めるのは私ではなく、長年ジャーナリストとして活躍している池上彰氏が「この本が世界を変えた」と認める10冊の本を紹介する「世界を変えた10冊の本」という書籍の紹介です。

世界を変えた10冊の本

本書の目次にもなりますが、池上彰氏が、「世界を変えた」と考えた10冊の本は以下の10冊です。

  • アンネの日記
  • 聖書
  • コーラン
  • プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
  • 資本論
  • イスラーム原理主義の「道しるべ」
  • 沈黙の春
  • 種の起源
  • 雇用、利子および貨幣の一般理論
  • 資本主義と自由

「聖書」や「アンネの日記」など、多くの人が「聞いたことある」と思うものもあれば、「初めて聞いた」という本も多いかもしれませんね。

全体的には、宗教と経済の本が多めです。これは、人間の歴史は思想とお金で動いている、と言えるのでしょうね。

本書の特徴とメリット

「どうせなら原著で読んだ方が良いんじゃない?」という意見もごもっともなのですが、本書は、ただの本の紹介や要約ではありません。

  • その本が書かれるようになった社会背景を知ることができる
  • 著者の生い立ちや人物像を知ることができる
  • 難解な意味や用語を分かりやすく説明してくれる
  • その本が広まったことによって社会がどのように変化したか分かる

といったメリットがあり、原著を読むだけでは分からない時代の変遷を知ることができます。

原著を読むにしても、本書を読んでから読むと、一層の理解が深まります。

アンネの日記から

一冊だけ、例としてアンネの日記を紹介します。

アンネの日記といえば、「ユダヤ人として、ナチスドイツから迫害を受けたアンネが、隠れ家の中で密かに書いていた日記」というイメージは皆さんお持ちだと思います。

 

では、なぜユダヤ人は差別を受ける事になったのでしょうか?

本書はここから解説してくれています。

ユダヤ人が差別をうける原因は新約聖書にさかのぼります。

新約聖書の中で、ユダヤ人が「イエスを十字架にはりつけろ」と叫び、「その血の責任は、我々と子孫にある(イエスを死刑にした報いが子孫に及んでも構わない)」と書かれたエピソードがある。新約聖書のこの記述により、キリスト教の一部の人に、「イエスを殺害した人の子孫(=ユダヤ人)は、報復を受けて当然だ」と考える人がいて、ユダヤ人差別に繋がっています。

そして、それを政治利用したナチスドイツが「あなたの生活が苦しいのはユダヤ人の陰謀だ」と主張し、支持を集めます。

「ユダヤ人は見つかれば強制収容所行き」という社会情勢の中、隠れ家で息をひそめながら書かれたのがアンネの日記です。

 

アンネの日記は、ユダヤ人のアンネ・フランクが13歳から15歳という多感な2年の間に書かれた日記です。

心も身体も、少女から大人の女性に変化する様子が赤裸々に書かれています。

また、か弱い少女から「ユダヤ人」として強く逞しく誇りをもって、この困難を乗り越えようとする文脈も伺えます。

しかし、残念ながら1944年8月1日を最後に、この日記は終わります。

そして、アンネは強制収容所に送られ、1945年2月もしくは3月に、栄養失調による衰弱により命を落とします。

 

さて、その後、アンネの日記が発見されて、世界中で読まれることになるのですが、ここからが原著では分からない本書ならではの池上氏の考察です。

つまり、アンネの日記がどのように世界を変えたのか?ですね。

アンネの日記の影響は以下のように及んだと池上氏は考察します。

アンネの日記を読んだ世界中の人々は「ユダヤ人がかわいそう」「ユダヤ人を助けてあげたい」という思いになりますよね。

そのような中で、ユダヤ人は「迫害されない自分たちの国家を建設したい」という要望をあげました。

すると国連は、アラブ人が多く住むパレスチナという土地にユダヤ人国家「イスラエル」を建国することを認めました。

ユダヤ人は、そのうち、国連が採択した「ユダヤ人の国」の範疇を超えてパレスチナを占領していきます。

ついには「ユダヤ人の国(イスラエル)」と「アラブ人の国」の中東戦争へと繋がります。

そして、今ではユダヤ人がアラブ人を迫害しているのです。

NPO法人パレスチナ子どものキャンペーンより https://ccp-ngo.jp/palestine/

*アラブ人の住んでいたオレンジ色の土地が、イスラエル(ユダヤ人)に侵食されています

今ではアラブ人(パレスチナ人)はユダヤ人に包囲され、安全とはいえない環境の中で生活をしています(パレスチナ問題やパレスチナ難民、って聞いたことありますよね?)。

もしかしたら、80年前のアンネのように、今は隠れ家の中で日記をつけているアラブ人少女がいるかもしれない。

それが池上氏の考えるアンネの日記の世界への影響です。

現代に生きる大人の教養として

本書では、このように、原著の要約だけでなく、その社会背景や、その本が世界にどのような影響を与えたのか、簡潔に分かりやすく書かれています。

他にも、宗教・経済学など「現代に生きる大人の教養」が詰まっています。

私は社会人デビューした身近な人に本書を「大人の教養」としてプレゼントしてきました。

ぜひ皆様にも一読をおすすめします。