「マルトリートメント」という言葉を聞いたことはありますか。
1980年代からアメリカなどで広がった言葉で、日本語では「避けるべき子育て」や「不適切な養育」と訳されます。
子どもを怒鳴ったり、叩いたり、感情に任せて親の気分で子どもへの態度を変える、といったことがマルトリートメントの一種です。
虐待とマルトリートメント
日本では、「虐待」という言葉が使われることが多いですが、マルトリートメントは虐待を含む広義な言葉です。
ニュースで報道される「児童虐待」は、死に至る暴行や、性的虐待などで大々的に取り上げられることもあり、目を向けられることも多いですが、マルトリートメントは私たちの日常のすぐそばで起こっている可能性があります。
日本では、ついつい「しつけ」と称して、手をあげたり、脅したりすることも見受けられます。
これらはマルトリートメントにあたり、そのような行為の頻度や強度が増した時、子どもの脳が物理的に損傷することが分かっています。
そして、脳の損傷により、学習意欲の低下や、非行、こころの病に結び付く危険性があることが分かりました。
一度傷を負った脳は(不可能ではありませんが)修復することは容易ではありません。
幼児教育に携わる者として
教育・保育現場でそのような行為が行われないことは当然の上で、私たちは園児の家庭環境に目を向けていく必要があります。
その時、注意すべき点があります。
「マルトリートメントをしてしまう親は、親自身が幼少期にマルトリートメントを受けている可能性が高い」
ということです。
「子育てとはこういうことだ」「しつけとして必要なことだ」という認識である可能性が高いからです。
そのような保護者がいた際には、保護者自身のケアを含めて、対応を考えていく必要がありますね。
<参考図書:子どもの脳を傷つける親たち>