あなたは「普通」の人ですか?
「普通」ではない人ですか?
今回は千葉日報2022年6月3日に掲載された『「正常」が狭められてゆく』(著:磯野真穂氏<人類学者>)を参考に、「正常」や「普通」について考察を行います。
年々増える診断名
近年、特徴のある子どもに、診断名がつく事が増えましたね。
ADHD・LDなどは、今ではすっかり珍しくなくなりました。
最近ではHSPやSCTなども認知度が上がってきましたね。
アメリカ発が多いのか、英語の頭文字で表現する診断名が多いですね。
私が知る限り、自身が幼少期の頃は、そのような診断名は無く、単に「個性的な子」「神経質な子」などと言っていたと記憶しています。
それが、ある時期から、特徴に応じて診断名がつくようになりました。
今では、診断名は年々増え、細分化もされています。
そのような診断名が我が子についた場合、悲観的な気持ちになる親もいますが、最近では診断名がつくことで、手のかかりやすい我が子の特性が客観的に認められた安心感や、改善や対応の方向性がはっきりしてホッとする親も多いですね。
新たな診断名が増えることは、その子どもにとっても、その子を育てる親にとっても、良いことづくめのように感じます。
果たして本当に良いことづくめなのでしょうか。
診断名が増える理由
近年、様々な特徴的な子ども(の特性)に様々な診断名がつくようになったのは理由があります。
診断名が増える理由は、残念ながらそのような子どもの為や親の為だけではありません。
「新しい診断名を作ることで、診断名を考えた学者の業績となるから」という要因も大きいのです。
新しい診断名をつければ、その疾患の第一人者として論文の引用回数が増えたり、学会の基調講演に呼ばれたりして、学問の世界で存在感を増し、大学で良いポジションを得ることができます。
学者にとっては、「個性的な子」ではなく、「○○という新たな疾患」とする方が自身にメリットがある、ということですね。
そして、学者に限らず、新たな診断名が誕生すると、それに関連した書籍が発売されたり、薬が作られたりしますね。
ADHD大国のアメリカでは、米国の子どもの15%がADHDと診断され、その大半が投薬を受けているようです。
日本のADHD治療薬も2016年には280億円規模でしたが、2026年には500億円超の市場規模が見込まれています。
ADHDに限らず、新たな診断名が誕生すれば、新たな市場(マーケット)が創出されるのです。
資本主義という社会は、新たな診断名を欲していると言えます。
診断名が増える弊害
では、診断名が増える弊害はなんでしょうか。
診断名がつくということは「普通ではない」ということですね。
では、「普通」を定義するのは誰でしょうか。
「普通」を定義するのは往々にして知性が高く、立場や権威のある人です。
その人たちが、「(知的な)人間とはこうあるべきである」というフレームから外れたら、診断名をつける。
その結果、「普通」「正常」の幅はどんどんと狭められています。
近い将来「何の診断名もつかない『普通』の人」というのはいなくなるかもしれません。
あなたも近い将来「普通」ではなくなるかもしれません。
診断名が増えることは善か?悪か?
さて、ここまで読んで、あなたは
「診断名を増やしているのは学者や製薬会社のエゴだ!金儲けだ!けしからん!」と思いますか?
「新たな診断名が増えることで、胸をなでおろせる親がいるなら、良いことだ。これからも増えるべきだ。」と思いますか?
この記事が新たな診断名が増えることについて考えるきっかけになったら幸いです。
ちなみに、私は、「自分の身体が十分にたくましくないと感じ、過剰にトレーニングを行ってしまう→muscle dysmorphia(筋肉異形症)」に該当するようです。